僕が生まれて初めて大きな企業に勤めた結果得た功徳があるとすれば、それは僕なりに世間と折り合いをつけることができたことではないかと思う。まこと大きな企業にはさまざまな人々がうごめいており、閉じられた場所に出現した世間そのものだった。もし、良い意味で世間そのものと違うところがあるとすれば、それは閉じられた空間の中で、人々が互いのことを外にいるよりも少し安心して見ており、接しあっていることだったように思っている。
これに対して街頭ですれちがう人々同士の人工的な無関心はどうだろう。週に何度もかようコンビニの店員さんに挨拶しないのは何故だろう。できあがった安心のコミュニティの外に出ると我々はたちまちのうちに「コミュニケーション不全のわたくし」を演じはじめる。