朝の、聞こえない足音について

冬至を過ぎて、朝が早まってきた。6時前に家を出る、その時間の空が、またたく星の有無は別にして漆黒の夜のものだったのが、今はもうすぐ群青と呼んでもよいものにまで変わってきた。朝が次第に短くなっていく頃には、増えてくる闇の量にわびしさと鬱屈が紛れ込んで身を攻めたてるようだったが、明るくなってくればくるで、今度は容赦のない太陽の侵攻に思いがけない不安の感覚を覚える。

大江健三郎著『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』を読み始めている。その書き出し、久方ぶりに大江健三郎の文体に刺激されて脳が喜びの声を上げる。感想は、またあらためて。