寝ぼけ男

寝ぼけ男の話をしよう。昨朝のワタクシの話である。

この1、2年、中年が次第に深まってきたサインなのか、朝起きる時間がどんどん早くなっている。ここしばらくは5時過ぎに起きて、5時40分に出かけ、6時過ぎの電車に乗って通勤するパターンを通してきた。

昨日、仕事納めの日の朝もいつものように目を覚ました。時計代わりに使っている携帯電話を見ると目覚ましが鳴り始める直前の時間。前日のワインの酔いはきれいに消えている。でも、いつもより少し遅く布団に入ったのが災いして、やはりまだ眠い。音が鳴り始める前に目覚まし機能をオフにして、やっとこさという感じで布団を這いだし、いつものように家人が寝ているひっそりとした空気の中、トーストを食べて家を出た。

夏の朝はいいが、冬の朝は暗く、寒く、辛い。この時期、関東の空が明るくなるのは7時に限りなく近い時間だから、僕が出かけるのはまだ月と星が空を支配する時間帯だ。昨日は、なんだか眠気が解けずにいつもより数分遅れての出勤となった。まだバスが運行を開始する6時前の寒空を早足で駅に向かう。前の晩のニュースでは、関東は朝から雲が多く、午後には雨になると言っていたのに、傘を持って出るのを忘れたことを歩き始めてすぐに思い出した。しかし、まだ月は煌々と照り、星さえもいくつかまばたいているではないか。おや、天気予報はうれしいことにはずれたなと思う。

駅までの、およそ徒歩20分の道のりをほぼ半分歩いたところに幼稚園がある。そこを通り過ぎたところで天空にかかる月をみやり、時計を確かめた。そのとき、実に妙なものを見た。その瞬間、「妙だ。普通ではない」という意識が起動したのだが、おそらく1秒ほどの間、その違和感が何かが理解できずに頭が空白になった。違和感の対象は時針である。時計の時針が2時台を指している。立ち止まって、意識のギアを切り替えて時計をまじまじと見た。2時50分。なぜだかしらないが、2時50分を指している。2時50分!

今度は、あらためて呆然と立ち尽くした。なぜこんなことに立ち至ったのかなど考える余裕はない。ともかく今は2007年12月28日の午前2時50分なのである。このまま出勤してしまおうかと思ったが、3時に電車が走っているわけがないではないか。今はなぜか真夜中の3時前なのだ。

おとなしく帰って、2時間寝直した。

夜、帰宅後に子どもたちに話をしたら、3人とも「ぎゃははははははははは」と床にひっくり返って笑い転げ、しばらく起きあがれなかった。