通勤の朝

ここ数日、いつもより少しだけ早めに家を出ている。日の出が遅くなるこの時期になると朝の6時はしんとしていて、会社も、学校も、競争も、引きこもりも、傷害事件も、原油高も、テロリズムも、みな昨晩見た夢に過ぎないのではないかと、すれ違う散歩の犬を眺めながら、まだ完全に目が覚めていない頭で考える。

昨日もそうだったのだけれど、駅に向かう道の途中で「にゃあ」と元気のいい声で呼びかけられた。昨日とまったく同じ白い乗用車の下に大きな白い野良猫が座っている。腰をかがめて「よっ」と小さく声をかけたら人なつこく寄ってきた。犬猫が嫌いな娘が見たら「きもっ」とか言われてしまうだろうなと思いながら喉をなでたら、今日一日がいい日になるような気がした。