アバドが仕事から降りたらしい

先日、『魔笛』の録音をこのブログで俎上に乗せたクラウディオ・アバドが10月3日に予定されているカーネギーホールの今年の開幕コンサートをキャンセルしたとニューヨーク・タイムズが伝えている。記事によると三週間前から一切のコンサートをキャンセルし、今後の予定は立っていないという。


ニューヨーク・タイムズの記事は、アバドが彼を慕う音楽家を夏のバケーションシーズンに集めて再興したルツェルン祝祭管弦楽団が、果たして彼なしでどれだけの演奏を披露できるか、と衆目の関心を呼び起こす内容となっている。演目はベートーヴェンの第九とマーラー交響曲第3番で、アバドの代役は前者がデイヴィッド・ロバートソン、後者がピエール・ブーレーズである。ロバートソンは2005年から米国のメジャーオーケストラのひとつであるセントルイス響の音楽監督に迎えられた、いわばアメリカ・クラシック界の若手エースみたいな存在だが、僕自身は一度も聴いたことがない。

■David Robertson (Wikipedia)


ブーレーズについては説明するまでもない。作曲家として歴史に名を残す人物。その分析的で情に流れない指揮については、『指輪』以来はっきり好き嫌いが分かれる。


というわけで、このコンビでニューヨークのクラシックファンが楽しみにしていた“アバドが作ったルツェルン祝祭”の代役を務められるか? ニューヨーク・タイムズによれば、ルツェルン祝祭管弦楽団は、セクションのリーダーがアバドと相談しながらセクション毎に練習をするのが他のオーケストラにない特徴のようで(同じシーズン・オケのサイトウ・キネンと同じ方法だ)、しかるが故にアバドがいないとどうなるんだと心配を煽るかのような、それによって、クラシック音楽ファンの関心をつなぎ止めようとするかのような書き方をしている。


とくに彼の音楽のファンというわけではないが、アバドの体調がよろしくないのは、やはり少々気にかかる。

■Not Just another Pickup Band(New York Times 2007年9月30日)