おじさん大好きブルックナー

吉田秀和さんが先日のNHKの番組の中で奥様に他界されて精神的に参っていたときにも「バッハだけは邪魔しなかった」と語っていた。僕も精神的につらいときに音楽が聴けなくなったことがあり、その際には好きな音楽がうるさくて、邪魔で、とても接する気にならなかった。好きなはずの音楽によって心をかきむしられるような気分に陥るのだ。そうした一時期が少しずつ好転する兆しがバッハの鍵盤曲であり、ハイドン弦楽四重奏曲だった。


それ以来、クラシックといえば器楽曲、室内楽を中心に聴くスタイルが自分の日常生活のなかに定着したが、それ以前は根っからのオーケストラ党だった。で、心の不調を脱したいま、やはりときどき無性にオケが聴きたくなる。とくに大時代的で、ひたすらロマンチックなものを。


こういうときに最初に手が伸びるのは間違いなくブルックナー交響曲。なぜか日本ではブルックナーはおじさんの大好きクラシックと相場が決まっている。2000年秋に、晩年になって急に“巨匠”に祭り上げれらた、今はなきギュンター・ヴァントが最後となった日本公演を行った際、あとでテレビの録画放送をみたら、指揮者の肩越しに映る聴衆が見事におじさんなんだ。あのとき「うーん」と心の中で唸ってしまった。ブルックナーのコンサートって年齢層がおじさんじゃないかと思っていたが、やはり見事にそうだった。あのコンサート、僕は久しぶりに「よし、聴きに行こう、オケ」と思い立ち、優先予約ができる音楽事務所のクレジットカードにまでわざわざ加入して入場券を入手しにかかったのだが、すごい人気で結局とれなかった。そんなガッツのいるチケット獲得合戦を勝ち抜く気合いと実行力を持っているのは若者ばかりだとばかり思いこんでいたら、なんと敵はみんなおじさんじゃないか! 若い女性が多いイケメン鍵盤奏者のコンサート、年配の方が目立つ室内楽、若い男の子がいっぱいのマーラー、なんてのに比べるとおじさん比率がブルックナーは圧倒的に高い。これはなぜだろう。


謎を謎のままに残して今日は時間がないのでここまで。というのは言い訳で、この謎には答えがないのです。どなたかフォローしてください。ブルックナーの続きはまた書きます。