変化球で攻める

デビルレイズ戦に登板した松坂大輔が、8回無失点で10勝目を挙げたことが報じられている。昨晩帰宅後、ちらとニュース番組で岩村を三振に取る映像だけを見た。2戦ぐらい前からコントロールもボールの早さも格段によくなってきて、日本にいたときの松坂のイメージに追いついてきたみたい。彼の投球を観戦するのはこれからが楽しみだ。


ところで今朝の新聞を読んだら、速球が走っておらず変化球主体の配球だったというピッチングについて、登板後の松坂の談話が載っていた。「変化球主体だったが、変化球でかわしたのではなく、変化球で攻めた」「直球でなければ攻めたことにならないとは思わない」という趣旨のことを彼が語ったらしい。記者とのやりとりの状況は分からないが、その場に「松坂クン、今日は変化球でかわしていたね」という空気があったのかもしれないし、彼がこれまでそうした変化球に対するメディアの扱いに不満を持っていたということなのかもしれない。そんな想像をしてしまった。


4月にも書いた(http://d.hatena.ne.jp/taknakayama/20070413)のだが、「直球=男らしさ」に代表される、メディアがいたずらに強固にしている固定観念をやっつけるうえで、松坂のような実力ナンバーワンのピッチャーがこういう発言をしてくれるのはとても嬉しい。集団の持つ規範を無視して記事を書けというのではないが、野球をこれだけ見慣れた大衆は「剛速球こそが追求すべき無二の価値だ」と信じるほどに単純なのだろうか。日本のプロ野球選手もそうなのだろうか。「直球=男らしさ」のほかにも、4番バッターに過度な意味を付与したがるなんてのも同じ類の信仰である。


彼らはおそらく書きやすい観念をもてあそぶことに甘んじているだけなのだが、そんな楽な仕事をしていて楽しいかいと揶揄したくなるし、あんたたちがそういう風に書くことによって、日本の空気はますますまったりと重たくなっているかもしれないんだぜとも言いたくなる。逃げるための変化球あれば、攻める変化球あり。