松坂大輔が米国の記者たちとランチした記事に思う

松坂大輔がボストンの地元ニューイングランドの記者たちとランチを取りながらおしゃべりをした記事がいくつかウェブ上に掲載されている。岡島も一緒だが、添え物の扱いになるのは致し方ない。なんだかちょっと可哀想だけれど。


同地最大手の日刊紙ボストン・グローブのコラムニスト、Dan Shaughnessyさんの文章がこちらで読める(もしかしたら、登録を共用されるかも知れませんが、興味がある方ばそうしてみてください)。もちろんたわいのない会話の記録でしかない。好きな映画は? 好きな女優のタイプは? こっちにはうまく馴染めてる? ジャイロボールの握り教えてくれる? 日本のスポーツ新聞もそうだが、こんな何でもない会話を記事に仕立てて読ませるスポーツ記者と編集者の技はやはりたいしたものだと思う。


どんなおしゃべりが二人のピッチャーと記者たちの間で交わされたのかは、むしろレッドソックスの公式ページに掲載されているQ&Aタイプの記事の方が分かりやすいかもしれない。


Danさんは松坂の真横に席があてがわれている。これはボストン・グローブという媒体の格がものを言っているのだろう。きっとそういうヒエラルキーは存在しているんだろうなと想像してみる。彼はその事実に続いて、こんな風に書いている。

It was a little spooky being that close to a $103 million arm.

spookyって、子どもがアメリカで使っていたのを覚えているが、お化けが出そうな薄気味悪い屋敷だとかの前を通りかかったときに使うような単語じゃないのか? 緊張するとか、後光がさすとか、恐れ多いとか、オレだったらそんな単語が出てくるに違いない。でも記者は常々スポーツ億万長者と話をする立場だから、緊張なんかしないだろう。だとすると、松坂はたぶん彼にとってお化けのような、非人間的な存在としてそこにいたということだろうか(英語の達者な方、このニュアンスを教えていただけると嬉しいです)。


そんなDanさんだが、しかし隣に座った松坂が、やはり普通の人間であることすぐ気がついて驚く。

He has great posture and perfect manners. He kept his napkin on his lap at all times and did not start eating until everyone at the table was served. He drank his iced tea through a straw.


日本人って、フツーに飯食うらしいよ。アイス・ティーもちゃんとストローで吸うそうだ、という理解が広がっていく。こんなこと、書くまでもないとは思うが、文字通りにしか読まない人がいるので言ってしまうと、私は本気半分、皮肉半分でこう書いています。「彼は野球人の割には実にきちんとした人で」とも読めないのは、僕の劣等感がそういう読み方を妨げるからだ。


野茂のときも、イチローのときも、松井のときも思ったことだが、松坂のような人がアメリカで成功してくれることは日本人にとってありがたいことだと僕は率直に思っている。国際理解って、ある意味そんな単純な側面が存在しているもので、しかし、理解の促進が単純な事実によって実現されることが、理解の促進が容易であることには直結しない。数週間前にジャパン・ソサエティの活動がニューヨークで表彰された話がニューヨークタイムズに掲載されていたが、そんな地道な長年の努力の積み重ねであるとか、松坂のようなスーパースターの輩出であるとか、それらは単純な事実であると同時に奇跡のような出来事だ。というわけで、今年も一生懸命NHKメジャーリーグの放送を見ることになりそう。


■Dice-K coming to plate(ボストン・グローブの記事)

■Matsuzaka, Okajima host scribes(mlb.comの記事)