はずれ!

今週は気が滅入る本を読んだ。村上春樹の『海辺のカフカ』を解題する新書本。八重洲ブックセンターに平積みされていたのを気軽に手にとって読み始めたら、なんと『海辺のカフカ』は民主主義を否定する「権威主義的パーソナリティ」を肯定し、歴史の事実を抹殺して昭和天皇の戦争責任をうやむやにし、「女性嫌悪」を下敷きにして、暴力を容認する方向に読者を導いていく小説なのだそうだ。「『海辺のカフカ』という小説は、この国家の名前による殺人の正当化と実は深くかかわった「物語小説」なのです」(小森陽一著『村上春樹論 − 『海辺のカフカ』を精読する」(p60)。最初、この人の言っているのは何かの冗談かと思った。「やれやれ」である。亀田の親父さんのチャンピオンベルトの話に続いて力が抜ける。

右であれ、左であれ、人の言動をつかまえてお前の今の歯の磨き方は体制べったりである、反体制的であるなどとおせっかいにのたまう奴はサイテーだと思う。もうさすがにそうした思いこみとこじつけによって成立する政治的言辞は消滅したのか思っていたが、どうやらそうではないらしい。気持ち悪いことはなはだしい。限られた時間を使う楽しみの読書の時間に、誰に強制されたわけでもないのに「はずれ」をつかんだのは悔しい。亀田君のボクシングを観た方がよほど楽しかったと思うが後の祭り。


話は変わって、OutLogicの杉本さんに彼のサイトでご紹介いただいたのを契機にお越しいただいている方もいるので、こちらからの返礼の意味をかねて、皆さんにも杉本さんをご紹介させていただきたい。


杉本幸太郎さんは僕が90年代後半にニューヨーク駐在をしていた頃からの年若い友人で、数年前に「Future Planning Network (FPN)」というビジネス情報サイトを立ち上げ、橋本大也さんが主催するビジネス・ブログだったかのコンテストで見事1位を獲得した方だ。当時は梅田望夫さんがCNET Japanで連載していた『英語で読むITトレンド』でもブログの話題を扱った際に取り上げられた人気サイトだったので、この方面にご関心のある方は覚えておられるかもしれない。


その後、育て上げたFPNの運営を他の人に譲り、この4月に独立して調査とコンサルティングの会社「アウトロジック・インコーポレイテッド」のオーナーとして活躍している。今、運営しているサイト「OutLogic」は会員制中心の情報交流を行っていることもあり、杉本さんの切れ味が万人に知れ渡る機会が減ったのが僕としてはとても残念だが、企画や事業開発、商品開発にご興味がある方にはぜひ彼のサークルへの参加をお勧めしたい。好青年という言葉をかたちにしたような杉本さんと付き合うのは楽しいですよ。

なお、独立したとたんに千客万来の杉本さんに仕事を頼むは、残念ながら簡単ではなさそうな模様です。

■OutLogic
■Future Planning Network (FPN)
■Blogに見る言論の新しいスタイル(梅田望夫『英語で読むITトレンド』より)