生まれ変わったと思いたいが

手術が終わって、麻酔が外された酩酊状態の中、医者に名前を呼ばれ、「聞こえますか?!」と呼びかけられ、その次に目の前に映像のようなものが見えたような、見えないような気がして、それに向かって「はい」と答えると、その後に家族の顔が現れて、声をかけて手を握ってくれた。家族は当然ベッドの横から私の顔を覗いていたらしいが、しっかりと覚醒に至らない自分には、顔が目の前におぼろげにあったという以上の具体的な認識がない。
その夢の中でたゆたうような時間帯が終わると、私は具体的なベッドの中で、具体的な腹部の大きな痛みを抱えて、上を向いて、喉をからからにして寝ており、痛みと脂汗と吐き気と寒気とに支配された世界に戻ってきた。
それからちょうど2週間。一人では体を動かせなかった時間から始まって、このようにタイピングをできるまでには回復したことを考えると、この2週間の間に赤ん坊から大人への成長を繰り返したような気がする。これが生まれ変わりであれば気分は清々とするだろうが、人生の垢をすべて落として生まれ変われたわけではない。2週間と1日前にいた地点に、少しづつたどり着こうとしているばかりだ。