紙の本はますます貴重品に

昨日、電子出版に関し、「狭義の書籍に関しては空騒ぎでは」と書いた。エンドユーザーの側に電子端末を介した読書に乗り換えるニーズが顕在化しているとは思えないという意味で、「やっぱりエンドユーザーのニーズが問題でしょう」という意味でそう書いたのだが、供給サイドとしてはそうも言っていられない面は当然出てくる。

影響が大きいのは雑誌の動向だ。Webの時代になって人々の紙の雑誌に対するニーズは弱まり、読者は減り、広告は集まらなくなってきた。iPadが普及すると、「Webで雑誌的コンテンツを読む」というスタイルは俄然強化されるはずだ。

そうなると、間接的に一般書籍にも影響が及ぶ可能性が出てくる。雑誌と書籍を書店に流通させている取次業の収入構造が変わり、書籍への課金が高めになる恐れがないではないということだ。もし、そうなれば、書籍をつくるためのコストは上昇し、供給過剰で一冊あたりの利益率が落ちている現状がますます強化されてしまう。

この話はあくまで一つの要素に言及しているにすぎない。要は紙の本はますます作りにくくなってくるのである。既存の出版社は、それ故に、それぞれの業界地位、つまりコスト構造に違いに応じた戦略をとろうとしているはずだが、そこに出てきた新たなファクターがKindleiPadというわけである。