村上春樹の新しい本

木曜日、金曜日と書店を6店舗ほど見て歩きましたが、どこも村上春樹の新作だらけで、明るい黄色と緑の表紙に彩られた二巻本の山を見ながら、いろいろと俗っぽい商売のことを考えました。

どの書店でも、「これでもか!」といいたげに、うずたかく積まれた本のどれほどが最終的に消費されるのか。少し立ち止まってレジに商品を持って歩く人たちを眺めると、実に多彩であることが分かります。私と同じ中年男性が少なくないのが、短時間の観察で印象に残った点でした。

消費される本には、一冊々々どれも同じテキストが書かれています。一つとして違わない工業製品ですが、著者と読者の関係は読書体験の数だけさまざまなバリエーションがあるのは不思議なことです。私などは、そのことを通じてキリスト教の神様と人間の関係がそういうものなのだろうと想像したりしてしまいます。

読者の自分に帰って、さてどうしようと、このところ村上本が出るたびに経験する逡巡の気分がめぐってきましたが、けっきょく自宅最寄り駅で寄った最後の本屋さんで買ってしまいました。仕事のための読書の合間に、強い酒を楽しむように、ちびちびとページをめくり始めています。