いい先生

高校野球の県大会が真っ盛りだが、息子の高校はシーソーゲームを演じはしたものの、9対7で試合を落とし1回戦ではや敗退。2日の休みを経て1、2年生から成る新チームがもう始動し始めた。

という話を本人が語る断片情報から得ていたのだが、彼らにとってのもっとも大きな変化は指導者が替わったことだ。夏の大会終了をもってこれまで教えていたアマチュア指導歴が長い団塊世代のベテラン監督が退き、大学を出て間のない体育教師が生徒たちを教え始めたのだ。先月息子が練習試合でケガをした際に直接お世話になったが、実に姿勢のいい、やさしい雰囲気の方だ。
昨日、新しい先生の指導2日目を終えた息子が部活を終えていつものように遅い時間に帰ってきて開口一番、「きつー!」、そして「楽しい! 練習がこんなに楽しいの初めて!」と目を輝かせるではないか。いったい何が起こったのだろうと驚いた。

今までは根性、根性の、時間が長ければいいというタイプの、昔ながらの野球部の練習だった。生徒たちは必ずしもその意味を理解しておらず、精神的・肉体的な疲れを吐露することが多かった。練習試合を見ていて、失敗をしたらどなって交代させてしまうやり方に正直なところ考え方の古さを感じていた。

春から部長としてチームを見てきた新しい先生は、指導初日に部としての目標を生徒たちに言い渡したという。秋季大会ではここまで、春はここまで、そして来年の夏はここまでを目指す。少しずつ、しかし到達点を明らかにして、成功体験を積み重ねていこうという考え方である。練習は今のところ基礎的な部分を強化するものばかりだが、ベースランニングのタイムを計ったり、ベース間球回し100球連続を2チームで競わせたりと、これまでとはまったく異なるカリキュラムが始まったようだ。誰かが落とせば最初からやりなおしという条件で行った4セットの球回しを2時間半かかて終えたチームの子たちは、達成後胴上げをして喜んだそうだ。あの暗い雰囲気の練習がそんなに簡単に変わるのかあと思った。大学で体育教育を専門に勉強してきた先生は、練習を目標があるもの、成果が見えるもの、具体的で身の丈にあった競争があり競うことの楽しみを体感できるものに変え、瞬時に子供たちの心を掴んだらしい。

身近で知ったちょっといい話です。