yukioinoさんの虫の世界

虫は嫌いな質なのだけれど、『雪泥狼爪』に掲載される虫の写真だけは見てしまう。写真だけだったらパスしてしまうところなのだが、yukioinoさんの絶妙な語り口を読むのが楽しいのである。

■ある晴れた日に。(『雪泥狼爪』2008年4月11日)

虫が好きな人というのは、こういう風に、ペットの犬猫に対するのとそれほど変わらない距離で彼らと向き合い、感情移入することができるということを僕はこれまで全く知らなかった。yukioinoさんの世界では、アリグモが「なんか用ですか」と語りかけてくるし、ミツバチは働く女性だし、幼虫は“お子様”である。「こっそりハンティングをしているひとを見つけた」と虫をつかまえて“ひと”とお呼びになるのがまたおもしろおくゆかしく、彼らと同等におかれた目線を象徴している。同じようにカメラを抱えて野原に出たとしても、僕など何一つ写せない。広大なミクロの広野に、見える人にしか見えないこんな世界があることに対して驚嘆せざるを得ない。つまるところ、すべて問題は愛情の有無だな、愛情。