秋深まる土地

『三上のブログ』で毎日三上さんが更新してくださる札幌の散歩道の様子を楽しみに見ている。その三上さんが藻岩山の写真だけを取り上げて毎日Flickrで紹介する試みを始められた。

http://www.flickr.com/photos/elmikamino/


三上さんの発見をさまざまに伝えていただく『三上のブログ』の記述とは違った、写真それ自体に何事かを語らせるような定点観測もまたいい。従来のサイトで紹介されているのと同じ情報なのに、こうして新たな編集の意図を加えることで、藻岩山にこれまでとは違った感興を覚えることができる。Flickrの、虚飾を廃したシンプルなデザインも内容に似つかわしい。札幌の街路に植えられているナナカマドの強烈な赤が目に染みる。1ヶ月半前に訪れた場所なのに、あっという間に別の世界のように佇まいを変化させてしまった北国の秋に恐ろしいような力を感じる。

これらの写真を見ていて昨晩から10月下旬に訪れたヘルシンキを思い出していた。そこでは天気のよい晴れた真昼でも冷たい北風が吹き付け、人々の表情や立ち振る舞いには、そうした環境に似つかわしい静けさが滲んでいた。環境は、実にあからさまに人を作るのだろうなと思う。そのときにあるドイツ人の学者にあったのだが、この人も僕が知っているドイツ人の平均からするとやけに静かで、控えめな雰囲気を身にまとっていた。この人はなぜ祖国を離れてこんな場所で大学の教師をやっているのだろうと疑問に思いつつ、彼の人となりが場所にきれにはまっているのが感じられて「So ist Das Leben」と自然な感想がどこからか落ちてきた。英語で会話をして、仕事が終わってからこちらが下手なドイツ語に切り替えたら、まいったまいったという顔をして彼は苦笑した。その繊細な笑顔を、紅葉が深まる札幌の様子を見ながら思い出した。