オロフレ峠、倶多楽湖、アヨロ海岸、地球岬、天勝の天丼

初めての北海道旅行も最終日。
登別の温泉宿も三上さんがその情報網を駆使して選んでくれた。有り難いこと、申し訳ないことに、私は行って泊まるだけ。登別グランドホテルはとても気持ちの良い宿だった。



登別の“地獄”を見物。たくさんの観光バスが停まり、今回訪れた中では藻岩山と並んでもっとも観光地らしい場所だったかもしれない。





登別温泉を立って、この日まずご案内いただいたのはオロフレ峠。当初の三上プランでは前日にここを超えて登別に入るはずだっがのだが、日没時間切れで高速道路を経るコースに変更した。このため、まずは峠で洞爺湖を望もうとなった次第。三上さんのホスト魂にただただ頭が下がる思いがする。天候が心配だったが、ときどき日が差し、途中までは期待が持てる雲行き。案外向こうまで見える。車はぐんぐん山道を登る。



しかし、残念ながらこの日も山は雲の中。標高900メートルを超えるオロフレ峠は真っ白な世界の中にあった。





同じ道をとって返し、途中にあるカルルス温泉をぐるっと一回りしたのちに我々は登別温泉の上にある山上湖の倶多楽湖へ向かう。緑のトンネルを三上車は進む。





鈍色に沈む湖は情緒纏綿として大きな感興を覚える。観光客で溢れる登別温泉のすぐそばなのにレストハウスも閉まり、静かな湖を楽しめた。



ここからは一挙に海に向かって下り、海岸線を西に室蘭を目指す。最初に「オプション中のオプション」と三上さんがおっしゃるアヨロ海岸に立ち寄ったが、このアイヌの遺跡がある海岸の佇まいは素晴らしかった。沙流川と二風谷、そしてこのアヨロ海岸を訪れて気がついたのは、アイヌの人々が暮らしている(あるいはいた)場所で、現在は観光地になっていないところが写真の素材として刺激的だったという事実だ。
すでに観光地になってしまっているところは、どこかで写真を見ていたり、あらかじめ頭の中に一定のイメージがあったりする。それに対して、こうした決してガイドブックには登場しない場所は、アイヌの人たちが住まったり、崇めたりする必然性を持つにもかかわらず観光バスは通り過ぎる。想像の外にあった光景が脳髄を刺激する。そういうことだろう。





アヨロ遺跡を探索し、さらにかつて三上さんが偶然見つけた山神の碑を探して歩いた。碑を探し藪に分け入る三上さん。






こののちに一路西に向けて海岸線を走ると、豪快な絶壁が近づいてきた。





三上さんの故郷である室蘭に入る。坂の途中から製鉄所を見渡す。



室蘭のダイナミックな海岸線には息を呑む思いがした。

トッカリショ。今し方辿ってきた海岸線をその向こうに望む。この造形は出来ればいつまでも見ていたい。



金屏風。この景観を屏風とはよく言ったものだ。トッカリショがアイヌ語起源、こちらが和語ということろが北海道ならではの命名の妙だ。



そして、最後には断崖絶壁の上から白い灯台と太平洋を望む地球岬。名称は断崖を意味する「チケプ」に由来し、地球は当て字という和アイヌ折衷だ。室蘭と言うと製鉄所のある工業都市のイメージしかなかった私には目を開かされた思いがする。これだけの自然資産を持ちながら観光客を呼び込めないとしたら、どこかおかしいとまで思ってしまった。それほど、13キロにわたるという海岸線は素晴らしい。二泊三日で北海道旅行をする機会があれば、何をさておき、ここに来るべきではないだろうか。



仕上げに室蘭市街に降りて、三上さんお勧めの「天勝(てんかつ)」の天丼で旅の締め。室蘭に帰省する人たちがわざわざ食べに来るという地元の代表的な味覚だそうで、味のいいエビとイカ、さっぱりとした揚げ具合に大満足を味わう。



製鉄所は煙を上げてはいたが、室蘭の街は活気があるとは言えない様子がありあり。アーケードの中は閑古鳥が鳴いていた。



室蘭の「Penny Lane」。


わんちゃん。



ビッグ招き猫。



それでも天勝には多くのお客さんが。



おいしい天丼で幸せな気分に浸りながら室蘭港の入り口にかかる白鳥大橋を渡り、一路新千歳空港へと向かう。曇天からはついに雨が落ちてきた。



雨が一段落するなか、樽前のサービスエリアで一息つく三上さん。三日間の素晴らしいプランをお作りいただいた上に、案内役として、ドライバーとして、この間休む暇なくお助けいただいた。ありがとうございました。



空港に戻ってきた。出発が遅れ、黙々と待つ乗客たち。定刻を40分遅れて飛び立った飛行機は、しかし順調に航行し羽田へと到着した。刺激に満ちた三日間の北海道の旅はこうして幕を閉じた。