演奏批評はときに人を不幸にする

『音楽の友』だったか、『レコード芸術』だったか、はたまた『音楽現代』だったか忘れましたが、音楽雑誌にこんな内容の投書が掲載されていたことがあります。たぶん30年近く前の話。

私はこの前生まれて初めてオーケストラのコンサートに行きました。その演奏の素晴らしさは筆舌に尽くしがたくに感激して帰宅しました。音楽を聴いて、あんなにどきどきしたことは初めてです。こんな素晴らしい世界があったのかと、何日も夢うつつの状態でした。ところが、貴誌の演奏会評にそのコンサートが取り上げられていて、あろうことか酷評されているではありませんか。「表面的でまったく深みがない」(?!) 私はそれを読んでショックを受けました。私があんなに感動した演奏を。感動した私が馬鹿だったのでしょうか? いったい批評というのは何のために存在するのでしょうか?


オリジナルは手元にありませんので上記の文面自体は当時の印象を基にした私の創作です。ただ、まさにこんな内容の投書が載っていたのは事実です。投稿者は本心で書いたのか、作り話なのか、それすらも分かりませんが、未だにこの投稿のことが時々思い出されます。