Google, Untouchable

三上さんとbookscannerさんがグーグルの書籍の電子化・インデックス化の話でやりとりをしており、これが面白い。ITの分野にご興味がある方は、ぜひ、お二人のサイトに行って御覧頂ければと思います。

■グーグルが本の電子化で狙う「うまみ」の正体は(『三上のブログ』2006年9月13日)
■『グーグルが本の電子化で狙う「うまみ」の正体は』に応える①(『bookscanner記』2006年9月25日)


その間に梅田望夫さんからもグーグルにまつわる強烈なエピソードが紹介された。どんどんはてなブックマークが増えているので、多くの方がすでにお読みだと思う。『ウェブ進化論』でグーグルのイメージを植え付けられている者としては、これはとってもグーグルらしいエピソードだ。

■グーグルの特異性と強さ(『My Life Between Sylicon valley and Japan』2006年9月24日)


とんでもなく頭がよい人たちだけが猛烈にしのぎを削り合いながら、ネットワーク上にある世界の情報のあり方を変えてしまうようなすごい仕事をしている。グーグルに3000人の社員がいたとして、その3000人のかなりの人たちが梅田さんが教えてくれたような人たちだとすると、これは途轍もないことだ。全社がフラットで、たぶんスタッフ部門なんてすごく少ない会社だろうから、事実そうなっているのだろう。

bookscannerさんがグーグルが書籍の電子化をどんどん進めていることに関して「そんなにお金払って、それでもやるってことは、WEBだけの時以上のリターンがあるってことなの?」と書いているが、グーグルは将来の競争相手に対抗するために意識的に掛け金をつり上げているという気はする。秀逸なコンピュータのアルゴリズムに基づくサービスで勝負するのと、コンピュータのアルゴリズムとそこに膨大な手作業を伴う時間コストを加えた結果完成するサービスとで勝負するのでは、参入障壁の大きさがべらぼうに違う。グーグルの会社概要の冒頭には「Google の使命は、Google 独自の検索エンジンにより、世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにすることです」と記されている。これを"ビット化された、ネットワーク上の"世界中の情報についての宣言だと思っていたら大間違いで、グーグルの大志はそんなに小さいものではないわけだ。

繰り返しになるが、アトムのビット化を巻き込むかたちでサービスを拡大していくことは、同社の理念を推し進めると同時に競争的立場をより強固にする。固定費を増大させれば、費用の埋没性が高まることを恐れる他社にとって参入リスクは高まる。ただ、この作戦があまりに過度に作用し、サービス提供に際して範囲の経済性も目に余るものになれば、つまりグーグルは公益事業と見なされてしまい、政府による規制の対象となってしまう。それは危険だ。この賢い企業は、こうしたトラップを避けるような巧妙な投資とサービス提供を上手に選びながら拡大していくのだろう。

グーグルの前向きな姿勢は僕に『アンタッチャブル』という言葉と例の白黒放送の時代のテレビドラマを連想させる(80年代に映画化もされた)。誰にも止められないエリオット・ネスの使命感、みたいな。僕は一度ならずこのブログの中で「グーグル恐い」と口走っている。これは、グーグルの各種サービスのユーザーである僕にとっては、心情的には「グーグルすごい」に常に書き換えることができる。同義である。エリオット・ネスの目指すところは一般大衆に容易に理解できる(=アル・カポネをやっつけろ)。グーグルはできない。見えない。そこだけが違う。