写真展をはしごする

末の子供の陸上競技を見物した後、ふいに思い立って東京恵比寿の東京都写真美術館へ。水中写真家・中村征夫さんと、米国の広告写真の分野で評価を得ているという橋村奉臣さんの写真展を開催しており、この二つをはしごする。


中村征夫写真展 海中2万7000時間の旅』は入ってびっくりすごい人。こうなると作品を見る以前に人混みが気になって仕方がない。チケットを見ると読売新聞の主催。魚の写真なんか誰も見に来ないだろうと思ったら大間違いで、年輩の方から若者まで路上の群衆がそのままそこにやってきたみたい。招待券をいっぱい配ったのかしら。やはり、新聞社の集客力はすごい。色とりどりの魚がいっぱい。色とりどりの人もいっぱい。

■中村征夫写真展 海中2万7000時間の旅


その一つ上の階で開催されている『HASHI(橋村奉臣)展』は、同じ建物の中とは思えないしんとした雰囲気。僕が好きな美術展の空間はこの静けさ。ふとチケットを確かめたらこっちは日本経済新聞社の主催だ。同じ新聞社の主催で、この人気の違いは何だと変な感心をしてしまう。


橋村さんの作品は超高速シャッターで瞬間を切り取った動く静物40枚が会場の半分を占め、残りの半分は初期の白黒銀板写真を模した“HASHIGRPHY”と写真家本人が称するパリ、ローマの風景写真を展示する。

■HASHI(橋村奉臣)展


『一瞬の永遠』と題された前者が圧巻。水、ワインなどの液体やガラスなどを被写体に、超高速度撮影でしか表現できない瞬間を印画紙に定着する手法はモダニズムからポップアートを経た野心が辿り着く一つの突き詰められた形を目にする思い。究極的なわざとらしさが堂々と前面に出ている。撮る作者よりもカメラ自身に存在感を感じてしまうような作風を嫌う人もいるかもしれない。あざとい? もしかしたら。しかし、ここでしか見られないものを見せていただいた思いがする。楽しんだ。