ビジョンとドリーム

梅田望夫さんが予告していた「アエラ」の対談記事が出た。茂木健一郎さんと梅田望夫さんという、いま多くの人にとってもっとも読みたい対談を実現させるのはさすが朝日新聞社様である(先日のエントリーで朝日新聞の悪口を言ったので、ここではちょっとよいしょしておかなきゃ)。

4ページにわたる対談には様々な刺激が詰まっているが、ネタバレ的記述はやめて、あくまで周縁的な感想を二つほど。

まず、対談の口火を切る茂木健一郎さんのひと言に関して。

ウェブ進化論』には、何とも言えない、知的な興奮を覚えました。日本では未来学という者がちゃんと立ち上がっていないけれども、梅田さんの本は、これから世界がどういう方向に向かっていくかを、非常に的確に予言している。日本の現状に対する痛烈な批判にもなっている。

本当にその通りだなと思う。梅田さんがこれだけの支持を集めるのにはいくつかの要素があるはずだが、茂木さんがズバリおっしゃるとおり、何よりも彼の未来学者的な志向と感性が人を引きつけるのだ。先日、ここでトフラーのことを書きながら、今の日本だとさしずめ梅田さんだなと思っていたので、茂木さんのひと言には「ほんとうにそうですよね」と言いたい気持ちになった。

今の日本では、目の前に差し出された課題を最新の方法論にしたがって処理し、効率を実現することに関しては多くの知恵と労力が注ぎ込まれている。しかし現在をきれいに処理することに必死な我々は、日々夕方を迎えて、一日が終わったことへの大きな安堵を感じることは出来ても、未来に向かって一日分歩み寄ったという実感は希薄なのではないか。日々の努力を正当化する錦の御旗を心に抱かずに一日の終わりにニヒリズムに陥らないのは難しい。ビジョンなくして生きるのは辛い。昨年までは、CNET Japanのブログで若手エンジニアのお手本だった梅田さんが、たった一冊の新書であらゆるウェブ利用者の行方を照らす先導者になったのだとしたら、それを可能にした市場のニーズがあったはずだ。僕はそれが未来が見えないことへの欠乏感、閉塞感の裏返しとしての的確な未来予測へのニーズだと思う。

梅田さんがトフラーのようなヴィジョナリストとしてだけでなく、マーティン・ルーサー・キングのような活動家として日本の若者の未来を牽引していくことに対して世の中の期待は大きくなるだろう。子供が今僕の横でキング牧師のかの有名な演説「I Have A Dream」を勉強しているのを聞きながら、梅田さんの、「日本人一万人・シリコンバレー移住計画」を思い起こす。

二つ目の感想を書き綴ろうかと思ったら、長男が「アエラって、けっこう面白いよね」とかなんとか言いながら参考文献を持っていっちまったので、急ぐ旅でもなし、今日はここまで。