素敵なオフィスで働きたい

今をときめく超先端企業グーグルの新しいオフィスがMetropolis Magazineで紹介されている。写真がたくさん掲載されているので、クリックして大きい画像で御覧下さい。おもちゃ箱風のデザインの中にオープンスペースが心地よく準備され、それでいながらプライバシーが保て開発に専念できる個室が窓際に並ぶこの上ない環境である。

これを見ていて、1,2年前に読んだ吉本隆明の発言を思い出した。「いい会社ってどんな会社でしょう」だったか「いま、吉本さんだったら、どんな会社に就職しますか」だったか忘れたが、インタビュアーが発するその種の質問に吉本が答えて、「自分ならばとりあえずオフィスがきれいな会社を選ぶ」みたいな回答をしていたのだ。

思想界の巨人がどんな答えをするかと思いきや、えっと読者に一瞬思わせる内容だったので、いったいどんな風に受け取ったらよいか、一瞬大いにとまどった覚えがある。次の瞬間に考えることを強いる吉本さん一流の返答だとは思うが、常に大衆の側に自らをおいて発言する姿勢を貫いてきた知識人の親玉の素朴な一言とグーグルのオフィスが重なり合う。この会社がいま世界でもっとももてはやされていること、もっとも成功したITベンチャーであることをいったん忘れたとしても、この会社の経営者が従業員に与えようとしている就業環境を見れば、それだけでこの会社にサムシングを感じない人はいないはずだ。

グーグルは時代の先端、極端かもしれない。だが、例外ではないなと思うのは、先日ひょんなことからお邪魔した、翻訳を中心としたベンチャー企業「アラヤ(株)」のオフィスが、やはり従業員のアメニティとオフィスのデザインとの関係を意識した実に主義主張があきらかな空間だったからだ。

気鋭のアーティストと顧問契約を結び、赤を基調とした眼にも鮮やかなオフィス空間を演出するアラヤさんは、20数カ国語の翻訳と広告や宣伝媒体作成をセットにした面白い企業ドメインの会社だ。よい会社はよいオフィスを構えている。人を財産にする会社の発想は、本来すべからくそうでなければいけないのかもしれない。

■アラヤ(株)のホームページ