「東海道五十三次」の元絵は司馬江漢?


■広重「東海道五十三次」の秘密―新発見、その元絵は司馬江漢だった

かの有名な安藤広重の「東海道五十三次」には元絵が存在し、その作者は司馬江漢だったというお話。著者は美術館の学芸員さんで、どこまで信じていいのかはこの本からだけではよく分からないというのが正直なところだが、だからと言って決して「とんでも本」の類ではない。広重の五十三次に対応する司馬江漢作と著者が主張する元絵がカラー図版で交互に並べられている。

面白いったらない。著者の記述を信じるならば、広重はほんとに見事に元絵の構図をパクっており、笑っちゃうほどそっくりさん。ところが、それ故に広重の尋常ならざる力量が圧倒的なインパクトで迫ってくるのだ。基本構図はそのままで、広重と元絵は月とすっぽん、朝青龍と序二段。広重は中学生の写生程度の元絵を見事にゲージュツに昇華させている。おそれ入谷の鬼子母神。あらためて知る広重のすごさ。