首根っこを押さえる情報を獲得する

2週間ほどブログから離れていました。今回は、仕事が忙しくてパソコンをさわれなかったというような景気のよい理由からでも、バンクーバーオリンピックを観るのに忙しかったといった楽しい理由からでもなく、単にパソコンの不調が理由でした。突如現れるブルーバック画面に悩まされ続けるノートPCを購入後3度目の修理に出し、ハードディスクを交換して戻ってきたのはよかったのですが、相変わらずマシンは突然落っこち青地に白のすだれ模様が頻出するありさま。当方、かなり切れて発売元の某外国パソコンメーカーに苦情を申し入れたのですが、もうこれ以上モノを相手に預ける気にならず、どうやら物理的な故障は直った様子でしたので(というか、実際には2度目のハードディスク入れ替えをしたんですけれど)、OSの入れ替えに着手し、結局、Vistaの再インストールと更新プログラム、Service Pack1のインストール、さらに一挙にWindows7のインストールまでやってしまいました。

この間、マシンが突然落ちたり、フリーズしたり、は数知れず。メーカーの有料保守窓口に何度か電話をして教えを乞うた他は、更新プログラムについてマイクロソフトのホームページを読んだり、グーグルを検索して情報を収集したりしながら、若干の知識の向上と忍耐の積み重ねによって、こうしてブログにカムバックできるようになった次第であります。Windows Update経由だと絶対にインストールされたがらないプログラムがあったり、アンインストールしようとすると必ず途中で固まるプログラムがあったり、調べてみるとメーカーによる相性の違いがあったりと、ともかくいまだによく分かってない理由が積み重なっているのを解きほぐし、賽の河原の石積みのように、動かしてはクラッシュ、一歩前進してはフリーズを繰り返した2週間でした。同じ操作をしているはずなのに動いたり、動かなかったり。いまだに、ド素人の私にはなぜうまくいったのかが分からない有様ですから、ともかくもここまで来ることができたのは僥倖としか言いようがありません。あるいは偶然というべきでしょうか。

我ながら何もわかっていないでパソコン使ってんのね、とあらためて感心してしまいました。別にパソコンじゃなくたって、テレビだってそうだし、機械ばかりじゃなく、あらゆる社会システムがそうなんですね。私がわかっているのは正しいボタンの押し方ぐらいで、理屈はほとんどわかっていない。これでいいのかという思いにすぐさまとらわれるのですが、しかしよく考えると、よいも悪いも、世の中ってそういう風にできている。そもそも会社にしたって、それがどんなふうに動いているのか、ある程度以上の規模になれば、完全にわかっている人はいないはずです。森羅万象にわたる理解がありえないどころか、ありとあらゆるものがブラックボックスです。「俺は○×の専門家だ」と自信満々の人だって、人より知っている範囲はごくわずかじゃないでしょうか。そうやって集まった個人、その集まりである組織がさらに集まって、大きな会社や業界や、地域や国をつくって動いていると考えると、心や意識を生み出す脳の機能が不思議だと言うけれど、私の存在について私が理解していることなど限りがあって当たり前だという気にもなります。

人間とは、そもそもそうした迂闊な存在なので、人よりも物知りであることはビジネス上の価値となります。例えばパソコンの知識があれば、私のパソコンのどこに問題がありそうかを教えてくれるヘルプデスクの職を得たりすることができるようにもなります。でも、別の見方をすれば、「あんなにいろんなことを知っていても、ヘルプデスクの仕事しかないのだろうか」と思ってもしまうのです。これが差別的な発言であり、我が身の上に向かってつばを吐くような言葉であることは承知の上で言っているんですけれど、私は専門知識を身についけている人々に敬意を払いつつ、正直なところそう考えてしまうのです。専門知識というのは、門外漢にとってはとてつもない知識ですが、実際にそれぞれの専門知識の周辺で仕事をしている人の数といったら、それぞれの場合において膨大になります。どうやったら、その知識を問題にするフィールドの中で本当の付加価値を持つことができるのか。どれほどまでに深い知識が我が身の経済的な安全につながるのか。

ひとつには科挙や司法試験みたいな試験に受かるほどの博覧強記の知識を身につけ、「何でも知っている」という人材を目指すことです。そうした資格を得た人々に対しては、社会がきちんとした処遇をするのには合理性があるし、実際そうした知識を持っている人は他人にはできないことをできるに違いありません。

もう一つ、別の方法は、相手の首根っこを押さえるような情報をピンポイントで獲得することです。これさえ持っていれば、相手はぐうの音も出ない、お客にならざるを得ない、そんな情報を手に入れること。それができないと、会社であれ、個人であれ、この情報化の時代のなかで生き残るのはなかなかにたいへんな課題になります。見方によっては、会社の中でもそれぞれの組織のキープレヤーは、組織の中でそれに類する情報を獲得している人であると言えないわけでもないのですが、組織を超えて需要を喚起できる単純かつ影響力が大きい情報を獲得できている人はそれほど多くないということでしょう。ごくまれにそういう人を見かけますが、私なんぞはそういうことがまるで分からない種族で、パソコンが動かなくなると、慌てふためくぐらいが関の山なのです。残念!