僕の英語力

ニューヨークへの駐在が始まった時のこと、2ヶ月先に彼の地に赴任した僕は、妻と3人の子供たちをJFK国際空港に出迎えた。新しい我が家に4人をタクシーで連れていき、彼らをタウンハウスのお隣に住む若夫婦に紹介した。そのとき当時5歳だった娘は心底感心した表情でこういったものだ。

「お父さん、日本人なのに英語しゃべれて、すごいねえ」


それから2年後。水洗トイレの部品が壊れたらしくうまく作動しないことを伝えるために僕は大家さんに電話をかけ、症状を一生懸命に伝えようと奮闘していた。それを聞いていたくだんの娘の楽しそうな一言が僕の耳に聞こえてきた。

「お父さんって、アントリーノさん(イタリア系の大家さん)に電話すると、いつも「アー」とか「ウー」とか言うんだよね」


一緒にダイニングテーブルを囲んでいた残りの家族3人が、大きな声でアハハハハと楽しそうに笑い声を立てる。「お父さんは日本人なのに英語をしゃべる」と感極まっていた娘は、もうその頃には英語の日常生活も、学校生活も自由自在になっていた。


「すごいねえ」と言われてから、たったの2年。栄光の日々は実に短かった。