神田敏晶さんのトークショー

夜の7時半から開催された「映像デバイスの未来、ブラウザメディアの未来」と題する神田敏晶さん主催のセミナーを聴きにいく。神田さんの他に、橋本大也さん、AV評論家の麻倉怜士さんというなかなか面白い取り合わせのトークセッションが企画されていた。

イベントの趣旨・内容は主催者のページをご覧ください。
■テレビとネットの近未来カンファレンス


また、トークの内容については上記主催者のページに聴衆のブログがトラックバックされるそうなので、ご興味のある方はそちらをお読み頂ければと思う。地上デジタルの時代になり、これからテレビはどうなるのか、それに合わせて映像を扱うウェブソリューションはどのようになっていくのかがテーマの会。スペシャルゲストと銘打って麻倉さんを組み合わせた点に神田さんの企画上の工夫が明らかだったが、これは思ったようには機能せず、現在の映像メディア技術のマーケティング論から一歩も出ない麻倉さんの饒舌は議論の流れを停滞させていた。モデレータ役の神田さんは年長者の顔をちゃんと立てる大人の対応で、それ故に上機嫌でくつろいだ麻倉さんは会のムードを弛緩させる(和気藹々で楽しく盛り上がったという言い方もまたできるけれど)。トークショーは難しい。


橋本さんの登場場面は最小限という感じでとても残念だったのだが、映像系ソリューションの方向に関して、映像にタグが付きインターネットで提供されるようになればチャネルという概念はユーザーから消えるかもしれないという指摘があり(チャネルの代わりにトピックの検索が取って代わるイメージ)、これは的を射ていた見事なものだと感じた。ただ、ここを掘り下げていく時間的な余裕がなかったのがとても残念。神田さんと橋本さん二人のかけあいだったら、このあたり様子はだいぶ違ったと思う。


僕は今の勤め先に転職する前、6年ほど以前だと思うのだが、神田さんに小さな仕事を依頼したことがある。ご本人は絶対に覚えていないだろうと思う。当時米国西海岸にいた神田さんに電子メールで依頼をし、ある分野のサービス開発の動向についてレポートをもらったのだ。依頼する側の興味のありかをはずさない報告が印象的だった。今日の司会も同じようにそつのないものだったけれど、どうやら神田さんがトークの前提としている聴衆のイメージはけっこうお馬鹿なのではないかと少し心配になった。山下公園のベンチで読んだ彼の著作にも同じような感想を抱く。書かれているトピックには非常に練られているものがあり、サービス精神も旺盛で部分部分はとても勉強になったが、満足したかと言われれば、小さなはてなマークが付く。



この会をエンターテイメントだと割り切ればそれなりに楽しくはあったが、日曜日に聴いた港北区民交響楽団のコンサートには遠く及ばないできだった。当事者の意気込みがまるで違う。