ブログは難しい

今朝パソコンを開いたら、昨日のエントリーの1時間ほど後に橋本大也さんから「率直なコメントありがとうございました」と題するメールをいただいているのに気がつく。


昨日の文章はパソコンの前に座り、勢いでものの10分で書き上げて公開した。だから「率直なコメント」であることはそのとおりなのだ。「5000円もふんだくっといて、時間の無駄させやがって」モードで書いた率直な文章だ。しかし、そのために書いた本人にしか分からない言い回しが支配的な文章に仕上がっている。自分自身のためだけに書く日記の文体である。橋本さん本人には僕が伝えたかったことはある程度汲んでいただけたとは思うが、それでもよもやご本人の前でこういう言い方はしないだろうという不正確きわまりない言い回しになっているし、他の方には何を言いたいのかよく分からない始末の悪い文章で終わっている。


Webに住んでいればいわれのない批判には慣れているだろうから橋本さんは別に気にもしないだろうが、僕自身はこのままだと気持ちが悪いので、もう一度だけ説明をさせていただきたい。


第一に僕の不満は橋本さんの講演にあったというよりは、会の企画と構成それ自体にあった。ポッドキャスティングを用いた教育の可能性をテーマにするのならば、もっとやりようがあっただろうにと思う。その上で、昨日の書き殴りの中で僕が触れていないこと、これだけは付け加えておかないと気が済まないのは、橋本さんの講演は、彼の誠実さが溢れるものだったということだ。


この日のテーマは橋本さんとは距離があり、彼が得意技を縦横無尽に繰り出してこてんぱんにやっつけるのが難しいのは明らかだった。また、スポンサーに気兼ねをする立場を最初から背負い込んでしまい、いいたいことを率直に言えない身分で登場してしまっていることもメッセージに切れ味を欠く理由になっていた。だから、やはり橋本さんはこの場所には出てくるべきではなかったのだ。そこは失敗だったと思う。しかし、そんなテーマでも橋本さんは出されたお題に対して精一杯の回答をしようと努力をしていた。


これに対して、中村伊知哉さんの挨拶は格好良すぎて明らかにその後の会の進行方向から浮いていたし(この方のしゃべりはいつ聞いてもほれぼれするけど)、アップルはiPodの宣伝をしただけだった。主催会社の社長のお話を聞けば、アメリカの大学でポッドキャスティングに取り組んでいる大学が増えていることは分かったが、結局のところは自社紹介が中心で「教育におけるポッドキャスト」というタイトルに届くには稚拙すぎた。ここで底の浅さが見えてしまったので、退却し、最後のデューク大学関係者の話は聞かなかった。もしかしたら、この講演が素晴らしくて、僕はあらぬ批判をしていないとは限らないが、まぁそういうことはないだろうと思う。


前座役に呼んだ橋本さんの講演がもっとも誠実に見えたというのはまずいんじゃないだろうか? そんな稚拙さが許されていいのか? とこれが僕の憤懣だったのだ。


しかし、今日になってまた別な風にも考える。ベンチャー企業の開催したセミナーをつかまえて、稚拙であることを批判するのは、果たして正しいのか、ということだ。よく分からない。


この前の梅田さんといい、今回の橋本さんといい、Webの世界に住んでいる人物に言及すれば、つまりその人物に面と向かってものを言っているのと同じことなのだということはよく分かった。「勢いで書かない。少なくともそれが相手を傷つける恐れがあるメッセージであれば」と肝に銘じておくことにする。