アナログ機器の倍音

品川の某所で「品川縣ビール」に出会った。何でも品川は明治になって一時「品川縣(けん)」だったのだそうだ。昔の品川は偉かったのだ。

その偉かった品川には文明開化にまつわる逸話がいくつもあるようで、実は我が国でビールが初めてトライされたのは品川だったそうな。キリンビールの工場が生麦にできる1年前のこと。だから、「日本のビールはここから始まった!」と地元の有志が地域振興の目的で作り上げたのが、この「品川縣ビール」である。

地域振興の目的から地元品川区でしか販売していない。醸造の量が限られており、なかなか手に入らないらしい。飲んでみると、軽やかな甘みが広がる。この小さな瓶が400円以上するとなるとおいそれとでは出ないが、また飲んでみたい。

■品川縣ビールのホームページ


話は変わって今日もオーディオの話題。Yさんは、共著で音楽評論を出版するほどの音楽知識と抜群の耳を持っている音楽鑑賞友達だが、そのYさんから、「ヴァイオリン関係のページを見ていると、制作者のQ&Aページがあり(これが良くできている)、その中にアナログオーディオがなぜ自然な感じを得られるかという点について、なるほどという意見がありました」とメールが届いた。

くだんのバイオリン制作者のページはここ。バイオリンの倍音成分が想像以上に豊かであるという事実を示した上で、アナログ機器の減衰が楽器の減衰の仕方と似ている点を指摘する。これに比べてデジタルのオーディオには自然な減衰がなく、倍音の不自然さが人の耳に不快さを引き起こすと、この方は言う。

 私の勝手な仮説では、倍音の形をいかに自然な形に保ったまま、録音限界点を迎えるかということが重要なのだと思います。すなわち、各倍音間の相対的な比率が、音色に大きな影響を与えると思うのです。アナログ録音の場合、録音限界点が15KHzだったとしたら、その手前から録音再生特性はダラダラと下がってしまいます。これが功を奏して、倍音の相対的な形に違和感が出ないのではないでしょうか。しかしCDのように強制的に22KHzでデジタル的に倍音をカットしてしまうと(特に高性能オーディオほどそうです)、22KHzまでだからという理由なのではなく、急激な倍音成分のカットによって、それまでに脳に記憶しているヴァイオリンの音に対して違和感が生じるのではないかと考えるのです。それは特に、上記なような非常に高い倍音構成の時に顕著に現れることでしょう。人間の感覚は絶対的なものには鈍感ですが、相対的(比較とか)なことに対しては機械以上に敏感です。これは私が常日頃から実感していることです。

思わず、なるほどと頷いてしまった。

Yさんも真空管アンプへの乗り換えを検討しているようなので、“豊かな倍音”仲間が近いうちにひとり増えるはずだ。