カルロス・クライバーが伝説でなかった頃

クライバーベーム追悼記念演奏会でバイエルン国立管弦楽団を指揮してベートーヴェン交響曲第4番を録音した頃、彼はすでに大家ではあったが、まだ伝説ではなかった。

僕は80年代後半に、一度だけ彼を聴いたことがある。昭和女子大人見記念講堂ベートーヴェン交響曲第4番と7番を演奏した時のことだ。古河電工から出向して一緒に仕事をしていたHさんが一度オーケストラを聴いてみたいというんで、じゃあ一緒に行こうということになり、彼の分もチケットを買ってあげた。まだ、プレイガイドでチケットを買うしかなかった頃だが、とくに無理して行列に並んだ覚えもない。僕もクライバーに肩入れするファンではなかったから、普通に買いに行って、普通に2枚のチケットを買ってきた。クライバーで初めてオケを聴いたHさんは、「なかなかよいね」とかなんとか言ってたっけ。当時のクライバー熱というか、一部の熱心なファンを除くクラシック熱はまだそんなものだったわけだ。嘘みたい。