風車、ベルリンで観た8年前のブラジル対フランス

ワールドカップの8強対決の一つ、ブラジル対フランスは8年前のフランス大会決勝戦の顔合わせだ。あの頃はニューヨーク駐在中で、ワールドカップの時期にちょうどベルリン自由大学のメディア研究者アクセル・ツェルディック先生に招かれてドイツに一週間滞在した。白眉は先生の別荘である田舎の風車小屋で寝泊まりした体験だ。歴史的建造物たる風車小屋の保存に一役買おうという運動の担い手として資材を投入して昔ながらの風車を保存する。先生はそんな活動を私財を投じて行っていた。中は3階建ての別荘として綺麗に使われている。購入、保守・修理を含めて日本円で1億円以上を注ぎ込んだと聞いて驚く。産業界に近しい先生の財力にも。

訪ねたのは、ちょうど、この写真と同じ地域にある、同じような様式の建造物だった。なんたる贅沢。なんたる優雅さ。後にも先にも二度と経験できないだろう至福の一泊だった。

その後、ベルリンに移動してツェルディック先生の同僚で私も顔なじみのドクター・ランゲと再会。彼の友人のカップルと合流し、連れて行ってもらったスポーツバーでドイツ人に混じってブラジル対フランスの決勝戦を観た。同じ欧州勢に肩入れするドイツ人がフランスの得点のたびに大歓声を上げるのを気圧されるように眺めていたような覚えがある。

あの夕暮れのベルリンの路上で大声を上げていたドイツの若者たち、かつて彼の教室へ連れて行かれ、数十人の彼の学生を前にして何の準備もなしに日本のIT事情を話すよう強要したドクター・ランゲ。勤め先を変わり、ドイツとの縁が切れた今、それらのすべてが夢の中の出来事のように感じられる。ツェルデック教授も2年前にお亡くなりになった。

8年という時間は思いのほか長いのかもしれない、などと思う。明後日、8年ぶりのブラジル対フランス戦だ。