クワガタの朝

夏の土曜日の朝、ベランダで雌のクワガタがひっくり返って足をばたつかせていた。横浜の街中でクワガタを見るなんぞはいつぶりか。虫取りなどに全く縁がない中学生の息子が「それ何?、カブトムシ?」などとのたまう。自分たちが子供の頃はよく林の中に捕まえに行ったのにと思いつつ、子供の頃と現在の違いを特徴づけるのは携帯電話、インターネットの登場であり、一方でいつの間にか考えることもなくなったクワガタやカエルの不在なのだと考えてみる。子供たちとの30年の世代差の中では、むしろ変わったことより、変わらないでいることの方が多いんじゃないかと常々思うのだが、久しぶりのクワガタはやけに新鮮に見えた。

明け方、体育館の床を長さ1メートルはあろうかという黒い甲虫がはっている夢を見た朝の出来事だった。