悪夢

電車に乗っている自分は、この世からおさらばするために薬を飲んだ直後であるという状況から夢の内容を反芻することが出来る。夢の中の私は、今から数時間後に効き目が全身に回り、意識はなくなる定めにある。

電車を降りた私はどこかのスポーツグッズ売り場にいる。そこで偶然に目に入ったテニスラケットの陳列を見て、瞬時にこれで壁打ちをしながらこの世から退出しようと心に決め、壁に掛かった一本を無差別に手にとってレジに向かう。しかし黒い塗装を施したテニスラケットを手に、私はとんでもない決断をした自分を悔やみ始めている。俺は本当にあと少しの後に死ななければならないのだ。何かの間違いであって欲しい。しかし後悔先に立たず。現実は動かせない。