新聞大連合の話

日経、朝日、読売の勝ち組新聞社3社が共同でポータルを作るという。第四の権力の皆様も今のままだとちょっとまずいかなーと考えているようで、それなりに知恵を凝らし、プライドもちょっとだけ忘れて、従来ならば決してあり得なかっただろう3社のタッグを実現したようだ。だが、意地悪な言い方だけれど、これで本当に3社のインターネット広告収入が上昇したら拍手喝采だ。

■「ネットを活用し新聞を断固維持」--戦略を模索する日経、朝日、読売が提携(CNET Japan 2007年10月1日)


インターネットだの、ブログだのゴミだと思って軽く考えていたら、どうも俺様のサイトは思ったほど広告収入に結びつかない。こうなったら最後の奥の手、3社の最強連合だぜ。どうだ、プロの文章をとくとご覧じろ、てな感じだろうけれど、情報発信ビジネスに関する競争の質が変わってしまっているのはほとんどのWebユーザー、『ウェブ進化論』を読んだあらゆる読者が知っている事実だ。新聞経営者さんの意識では、あたかもカルテルを組んだかのような勢いかもしれないが、広大なWebの世界の中では何ほどの影響も及ぼさないだろう。クレイトン・クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』や『イノベーションの解』で論じたように、技術革新によって競争の軸自体が変質している。そこを新聞は本当にはまだ分かっていないのではないか。


人間なかなか自分のことは見えないもので、企業もそのあたりは同じ。自らがどんな状況に立たされているのか、実質的に誰と競争しているのか、ここで一踏ん張りするために自分自身の強みをどこに見いだせるのかについて透徹に考え抜いて理解してるケースは必ずしも多くない。だから「コアコンピタンス経営」などといった、ちょっと目には言わずもがなの言葉が有り難いメッセージになるのだ。想像するに新聞社の経営者は、Webを昼夜活用しているユーザーの視点に立ったときに自分たちの発信している情報のどの部分が有用で、どの部分がそうではないのかについて分析的に理解しようとしてはいないと思う。販売制度など昔から叩かれ続けている話は別として、「情報それ自体では負けないぜ」と今でも思っているんじゃないか。もちろん、記者さんたちに文章力はあるでしょうし、取材力はあるでしょう。でも、競争はそういう次元で進んでいる訳ではない。


新聞の話にかこつけて書いたが、既存ビジネスで過去に成功体験を持った集団の中で新しい考え方を導入するのが難しいということに関しては、私自身の小さな仕事の範疇においても個人的に悩むところなのだ。だから、新聞がとんちんかんをやるのもよく分かる。きっと新聞社の中では歯ぎしりしている人たちもいるだろうなとも思う。