横浜フィルハーモニー管弦楽団のマーラー『復活』

id:tsuyokさんがティンパニのトップで出演した横浜フィルハーモニー管弦楽団マーラー交響曲第2番『復活』を聴いてきた。何度かコンサートもご一緒している下川さんとは、終演後に落ち合い、ビールとワインとでtsuyokさんと横浜フィルの演奏に乾杯をしてきた。




マーラーの『復活』は、すごい曲だなとあらためて思った。第4楽章「原光」をアルトが歌ったところから、否応なく意識は曲に引き込まれ、終盤のクライマックスまでしびれ続けた。いったい何度、レコード、CDで聴いたかしれないのに、何度聴いても、結局この曲にはしてやられる。してやられたと思った相手はマーラーだが、それを手助けしたのは、間違いなく横浜フィルハーモニー管弦楽団の演奏だ。

横浜フィルの演奏は、一度聴いた際の印象そのままで、元気の良さが最初から最後まで曲の全体を覆い、しっかりと大曲の凄みを受けとめていた。数十分を要する曲をさらい、人に聴かせるレベルに仕上げるのは生半可ではない。アマチュアの楽団に属する方々の実力はプロのそれのように均質ではないから、その苦労はプロの先生方とは違った意味で容易ならざるものである。聴く立場からすると、そこに感動の芽が潜んでいる。ブログで表現すべきは、やはりまずそこである。書く立場からすると、どうしたってそうならざるを得ない。ある意味で、演奏の良し悪しは二の次なのである。

tsuyokさんに演奏会にお招き頂いた御礼のメールを送った。それに対するtsuyokさんからの返信には、事故(ミス)の多発を気にしつつ、しかし、とても楽しかったとの感想が記されていた。それはそうだろうと思った。あれだけの演奏をし、感動を聴衆と共有し、それで楽しくなかろうはずがない。

tsuyokさんが気にしていた瑕疵の有無については、聴いていた私には大して気にはならなかった。練習してきたメンバーの人たちにしてみれば「練習では出来たのに!」という思いがあるだろう。当時者にしてみればそれは無念だろうけれど、ミスは実演にはつきもの。ラッパの音がひっくり返るのはプロの楽団だってあることなのだし、縦の線がずれたって、それはそれ。むしろ、聴衆として最初に気になり、そして最後まで気になるのは、演奏者が曲を自分たちのものとして理解し、その結果としての明確な主張が聴こえてくるかどうかだ。この点については、聴き手としては、相手がプロだろうがアマだろうが、全然関係ない。聴衆はわがままなのだ。

で、横浜フィルハーモニーの演奏はどうだったか。サムシングはきちっと聴こえてきた。終楽章は感動ものだった。フォルテシモの迫力は大したものだった。ただ、全体を通じて弱音の表現には正直なところ今一歩の不満が残った。昨日の演奏でよく分かったのはその点で、弱音で、しかし、そのなかに緊張感を失わず、歌うことをマーラーは要求する。もっと歌ってくれ、楽譜が、メトロノームが目の前に浮かぶような演奏はしないでくれ、とマーラーは要求する。昨日、第1楽章、第2楽章を通じて、マーラーはそんなふうに私に語っていた。音を出すのが簡単な音譜が難しい。ポーンと単純に鳴る一音が難しい。

tsuyokさんの演奏について一言。旋律が縦横にかけまわるマーラー交響曲はあらゆる楽器にとってやりがいのある音楽に違いないだろうが、とくに『復活』はトランペットに代表される金管楽器とともにティンパニのための楽曲といってよいほどである。tsuyokさんは巨大な存在に挑み、よく戦った。その心意気やよし。そして、その成果だが、ちょっと感動した。よく歌うティンパニだった。これから先は、なんと表現してよいか分からない。雄叫びをあげるかと思えば、ささやき、集団を煽動するかと思えば、後ろにまわって全体を支える『復活』のティンパニは魅力的である。それを十分に堪能させてもらった。これはお世辞ではないんだよ、ほんとにすごくよかったんだよ、という点は何度も念押しして強調したいところだが、その思いについては、一緒に聴いた下川さん(id:Emmaus)に出てきて頂き、補強していただくしかない。

というわけで、tsuyokさん、サンキュ!