緑弦楽合奏団の定期公演

年に一度、招待して頂いている緑弦楽合奏団の演奏を聴いてきた。横浜市青葉区の在住者を中心に組織されたアマチュアの団体だが、コンセルトヘボウ、N響と有名オケでバイオリンを弾いていらした村上和邦さんが指導し、ソリストを務められるその合奏能力は、僕が知っている平均的なアマチュアのレベルからは完全に抜け出ている。この合奏団で聴くときには、音程は大丈夫だろうかだとか、縦の線は合うだろうか、合奏は破綻しないだろうかとひやひやしながら、そのスリルを自分のことのように楽しむといった、ある種のアマチュアオケの楽しみとは隔たったところで、曲をどのように仕上げてくるのか、毎年純粋な興味と喜びの気持ちを携えて聴きに出かけるのである。

昨日は、凝った曲が常に顔を出すここの定期としては珍しいオール名曲コンサート風で、クラシックを聴く人がよく耳にする作品ばかりが並んでいた。僕の友人で、いつもは指揮をするT君がビオラに座り、二十数人、指揮者なしの意欲的な演奏である。

ロッシーニの小品に続いて、村上さんと、大河内涼子さん、早川愛美という若いバイオリニストお二人がソリストに立って、ビバルディの『調和の霊感』から第2番、バッハの『2つのヴァイオリンのための協奏曲』、サラサーテの『チゴイネルワイゼン』と名曲続きの前半は、多彩な響きの妙を存分に楽しむ。後半、ソリスト二人も合奏に加わって、曲想の雄大な部分を拡大して見せたラズモフスキー第3番弦楽合奏版ともに見事。アンコールはベルリオーズの『宗教裁判官』弦楽合奏版で、華やかなプログラムにさらに花を添えるような快活な幕切れが演出された。

こういうレベルの演奏に対して、村上龍が『無趣味のすすめ』で書いている「趣味は本質的に老人のものだ」という皮肉なもののいい方は、表面的な主張のレベルでも、芸としても残念ながら勝てていないとあらためて思った。あらためてここに書くのは、しつこいかもしれないが。