アリ

昨日のこと、高校野球の練習試合をレフトの後方に位置する低い階段に座って眺めていたら、足や腕がむずむずする。大きなアリが、一匹、二匹と僕の上を歩いている。どうやら、そこはアリさんの通り道になっていたようで、僕はその真ん中で彼らの邪魔をしていたのである。
「おっちゃん、邪魔だよ」
とある一匹からはっきりと抗議をされてしまった。
ちょっと右側に体をずらして、座り直したが、それでもやっぱりアリは上ってくる。
「おっちゃん、気が利かんねえ」
とアリごときに呆れられてしまう。
「気が利かないのは昔からでね」
と言い訳をしようかと思ったが、白い目で見られそうな気がして、思わず口をつぐんでしまった。