格好いい


初島見物から戻り、その夜は山本さんのお宅で御主人様お手製の刺身、伊勢エビのスープ、サラダ、さらには鯛の炊き込みご飯というごちそうで歓待いただいた。伊勢エビとサザエは初島の漁協で仕入れたばかりの、つまり今朝はまだ海の中で泳いでいたとれたての一品。伊勢エビはホテルの披露宴でグラタンになって出てくるやつより一回りか二回りも大きく、サザエも自分の拳よりずっと盛り上がっている。



そんな伊勢エビとサザエに同じく地元産のホウボウ、イカを加えた新鮮この上ない刺身に舌鼓を打ち、伊勢エビのみそで濃厚さと繊細さを備えたスープをすすり、その合間に二種類の大吟醸で舌を洗う。贅沢この上ない晩餐を堪能させていただいた。


でもその忘れがたい味もさることながら、肝心なのはこの豪華なディナーの作り手がこの家の主であることだ。びんびんはねる伊勢エビやサザエをさばき、イカやアジをきれいに開き、繊細な味わいのスープ、舌が歓声を上げる鯛飯を魔法のようにテーブルに並べてしまうのが、普段は学生相手に情報処理エトセトラを教えている大学の先生。僕がたまにやる男の料理とはものが違う。
こういうのが本物の格好よさである。