ロストロポーヴィッチ逝く

ロストロポーヴィッチが亡くなった。熱血漢で、エネルギーの固まりという印象があるロストロなので、80歳でこの世を去るとは思いもよらなかった。それほど熱心な聞き手ではなかったが、艶やかな音と難しいパッセージをチェロとは思えないほど軽々と操るテクニック、幅広いレパートリー。けっきょく一度も生で聴かずに終わってしまったが、ステージ上の姿を映像で見るだけで「ロストロが弾いている」と引き寄せられる演奏家だった。技巧が人々を驚かせたヴィルトオーゾの時代がこれで終わったのかもしれないと、そんな風にさえ思う。この手の音楽家はあと誰が残っているだろう。


スピード感のあるバッハの無伴奏チェロ組曲は好みが分かれるところだろうが、ロストロらしい演奏。僕はよく聴いている。同じように、カラヤンベルリン・フィルと組んだドヴォルザークのチェロ協奏曲は、カラヤンの解釈ともども「技巧だけの、表面的な演奏」という悪口を言うのは簡単だが、やはり時々取り出しては聴く盤として手もとにある。小澤征爾をはじめ何人かの指揮者とこの曲を録音しているロストロだが、僕などが言うまでもなく、これからも聴き続けられる名盤はカラヤン盤だろう。



バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲