2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

コンサートの楽しみについて

「コンサートの」とタイトルを付けてはみたものの、最近はプロの演奏を聴きに出かけるのは年に2,3度程度。あとは友人達が関係しているアマチュアの団体の催し物を3度か4度拝聴するのがせいぜい。身も蓋もない話だが、子供らの学費も払わねばならないし、お…

我、日本文化を愛す

熱海に遊んだ二日間、テレビも新聞も、インターネットにもさわらなかった間に現実の物理的な雲向きがいっぺんに変わってしまい、出かける前は「来週も晴れるでしょう」だったはずの天気予報が連日の雨と曇りを伝えている。狐につままれたような気分。秋霖の…

鈴木久雄著『ブルーノ・タウトへの旅』

テレビ東京でドキュメンタリー制作を手がけていた鈴木久雄さんが2002年6月に上梓した『ブルーノ・タウトへの旅』(新潮社)を昨日、図書館で見つけた。タウトの生地であるケーニヒスベルク(現カリーニングラード)、彼がキャリアを積んだベルリン、終焉の地…

またブルーノ・タウト

ブログにモーツァルトについて書けば、検索エンジンを通じてネットにさざ波が立つ感覚を味わう。カメラのことを書いても、松坂のことを書いても同様に。広い琵琶湖のほとりで石投げをするようなものだが、それでもどこかで反応があるのがブログの面白いとこ…

換骨奪胎

戦前に活躍したドイツの建築家ブルーノ・タウトの名前は、日本では桂離宮や日本建築、日本文化の紹介者としてつとに有名だ。タウトがどんな建築家は知らなくても桂離宮をべた褒めしたガイジン建築家の名前は多くの人が知っている。僕のタウトの知識もそのレ…

旧日向別邸のブルーノ・タウト

このブログをお読みいただいている方に建築についてご興味を持つ方が何人ぐらいいるのか分からないが、書いている私はまるで何も知らない素人で、そんな私が建築家の話題に触れても誰が面白がるものかと及び腰にはなる。でも、そんな素人が何かを書いてみた…

熱海の休日

週末、熱海に行ってきた。JR線に乗れば1時間10分で着く熱海だが、私の頭の中では地図の上から欠落している都市の一つである。眼中にない、というやつか。ところが、二十数年来お世話になっている以前の勤め先の先輩で、ここ十年は大阪の大学で教鞭をおとりに…

ざっくばらんな感想

三上さんの哲学者の嗅覚が、mmpoloさんと私がそれぞれ個別のトピックについて書いた文章を結びつけて新しい想起の機会をつくってくださった。大いに感謝しなければならない。 ■肉体の衰弱について(『mmpoloの日記』2007年8月24日) ■衰弱と不滅:mmpolo vs.…

不滅、あるいは聴き継がれるべき『魔笛』

フルトヴェングラーの『魔笛』を初めて聴いた。録音は1951年。ザルツブルク音楽祭におけるライヴ録音である。新しいアバドの録音を聴いてとてもいいと思ったが、するすると喉を通る清水のような演奏に「軽すぎる」と不満を漏らす向きがあるかも知れない。対…

上善水の如し

病気をする前は永遠の青年と言いたくなるほど若々しい風貌だった指揮者のクラウディオ・アバドも76歳になり、久しぶりに写真を見るとたしかに76歳のおじいさんになっていた。しかし、一昨日のエントリーで書いたように、その彼が病気を経て今まで聞こえなか…

美崎薫さんの不滅性

東大で行われたワークショップ『MEMORY+』で美崎薫さんが行ったプレゼンテーションの際、膨大な自らの情報収集の記録を「記憶する住宅」に貯め込んでいる彼の実践に対して茂木健一郎さんが質問を発した。ちゃんとメモを取っていなかったので正確に再現するこ…

『MEMORY+』

昨日聴衆として半日間刺激を頂いたワークショップの簡単な報告をさせていただきたい。参加したのは『MEMORY+ テクノロジーによる記憶の拡張は可能か?』と題する研究会コーディネイターとモデレータをソニーコンピュータサイエンス研究所インタラクションラ…

アバドの近況

ニューヨークタイムズが指揮者のクラウディオ・アバドの近況を伝えている。6年前に胃ガンを発病し、胃の大半を切り取ったアバドだが、元気に指揮台に立っているようだ。カラヤンの後釜としてベルリン・フィルの音楽監督になり、一時はベルリン、ウィーン、ス…

『魔笛』のことなど

先週、ケネス・ブラナー監督の『魔笛』を観てからというもの、『魔笛』の音楽が耳について離れない状態が続いている。18世紀の音楽が未だに現役であることの不思議。しかし、先週書いたときには触れなかったのだが、あの映画の演奏はいただけなかった。元気…

年に一度の再会と楮佐古晶章さんの作品のこと

昨日は、ワシントンに住むNを囲んで食事とおしゃべりの夕刻をすごした。高校時代の友人3人で気のおけない自由な時間。国際機関の中枢で想像を絶するような日々を送っているNの話を肴に中華街で一次会。その後、大型客船が停泊する大桟橋で港横浜の夜景を楽し…

『アサッテの人』

昨日、「若手の小説を読んだけれど面白くなかった」と書いた。書いたエントリーの煮え切れなさに書いた本人が嫌気をさした。それはないだろう、その言い方は卑怯だろうと思い直し、やはり肯定的な、元気の出る文章にはならないけれど、そこまで書いたのなら…

小説を読む

久しぶりに現役の、それも若手の人の中編小説を手にとって読み始めたのだが、どうもいけない。ときどき比較的簡単に読めてしまう物語性の強い小説を読んでおり、面白いのがあればブログに感想文を書こうと思っているのだけれど、響くものになかなか出会わな…

お盆の時期のわたくし

今年は留守番に近い仕事を引き受けたので、お盆休みの今週も出社しないわけにはいかなくなった。でも、まあ冷房の効いた場所でのんびりとしながら、しばらく放っておいた企画の謀をするのも悪くないなと思っていたら、その留守番の関係で予想をしていなかっ…

ケネス・ブラナーの映画『魔笛』を観る

ケネス・ブラナー監督のオペラ映画『魔笛』を観た。たまたまWebをうろうろとしていたら、この作品の視聴記にぶつかり、ちょっと行ってみるかとなった次第。年に2本程度しか映画を観ない人間なので、平均からすると今年最後の映画鑑賞になるはずだ。ちなみに…

中沢新一著『熊から王へ』を読む

図書館をぶらぶらしたら、mmpoloさんにお勧めいただいた一連の中沢新一本の中から『熊から王へ』があったので、手に取ってみた。アイヌを南限とし、アリューシャン列島から北アメリカに点在する北方狩猟民の神話的世界と世界観、社会規範を紹介することを通…

フレーミングの楽しみ

スタジオで写真を撮る人にとっては光源をどうするか、どんなライトをどのように配置するかが写真の醍醐味であり、技術が宿るもっとも大きな部分だと思うのですが、私のような素人カメラマンがお散歩写真を撮る際に出来ることの最たるものは構図を決めるとい…

夏の首都

夏が来ると人々は誰もができうるかぎりニューヨークから出て行く。自然の中に出かけないにしても、どこか海岸に行く。でも私には海辺は堪えられない。そこにはけばけばしい色のショートパンツをはいた半裸の人々が闊歩し、私の目を害する。人々は砂に埋もれ…

写真を撮る

今朝、5時半に目が覚めたので、よし、と思い立ち、港まで写真を撮りに行ってきた。今日の横浜は最高気温が35度を超えたらしいが、その時間帯から太陽と湿気にあてられて楽ではなかった。空気は高い湿度を帯び、世界はすべてが薄い水の膜に覆われてるように見…

HASHIさんと三上さんの再会

昨晩、帰宅してしばらくしたちょうど午後9時、電子メールが入ってきたのを確認したら北海道に行っているはずの写真家・HASHI=橋村奉臣さんからではないか。件名は「札幌だぁ!」。開いてみると、奥様の良子さんの署名入りで、ジンギスカンに舌鼓を打つHASHI…

あちら側から響く音

今朝の通勤電車はますますお盆の到来を感じさせる雰囲気だった。まだすかすかというわけにはいかないが、「おやこんなところで」と思うような駅で席が空き、思いがけず座れてしまったりする。正月とともにお盆の存在は、日本の産業経済や人々の生活をしっか…

誠実の行方

『mmpoloの日記』の「誠実の行方」を読む。面白く、いたく想像力を刺激された。■誠実の行方、詩「天山」から(『mmpoloの日記』2007年8月8日) 僕の父親は戦中派の古い人間で、mmpoloさんがお書きになっているように「誠実なことが大切」に類する昔ながらの…

来週はお盆休みだし

『三上のブログ』ではジョナス・メカス『どこにもないところからの手紙』を下敷きにして反「計画主義」的な生き方が、教条主義とは正反対の柔らかい文体で語られている。このエントリーはまだ続きがあるようだが、ここまでを読むだけで心が柔らかくときほぐ…

ニコンD40の第一印象

ニコンの小型一眼レフ「D40」を入手して一週間少々。2度の週末に使ってみた第一印象を書き連ねておきたい。 とにもかくにも、まだうまく使いこなせない。筐体が小さくて右手の親指がはみだし宙ぶらりんになるのは慣れた。軽いからぶらぶらとさせながら歩き回…

中沢新一著『アースダイバー』を読む

ニューアカの旗手としてもてはやされた中沢新一を読んだのは、流行に一拍遅れて『チベットのモーツァルト』を手にしたのが最初だが、よく分からなかったことしか記憶にない。その後、『雪片曲線論』だったような気がするが、シューマンの音楽をモチーフにし…

褒める文化

このブログがご縁で知己を得たHASHIこと写真家の橋村奉臣さんと久しぶりにお会いして話をすることができた。ニューヨーク在住のHASHIさんが、撮影のために日本に滞在する忙しい時間の合間を割いてくれたのだ。 いろいろと楽しい話をした中で僕にとって“望外…