雲平線

昨日は自分には珍しい九州出張。日帰りで熊本に行ってきた。羽田空港を飛び立ち、空の上から自分の住まいを目視したり、濃い箱根の緑のなか茶色い引っかき傷のように生々しい大涌谷を見下ろしたり、山襞が複雑に入り組む南アルプスを眼下にするあたりまでは日本地図の上を飛ぶような飛行だったが、そこから西は曇り空が一面に広がり、飛行機は雲のじゅうたんの上をゆっくりと進んだ。雲は白の海のように視野を覆い、一番遠いところで空との切れ目はゆるやかに弧を描いて左右いっぱいに広がっていた。水平線や地平線という表現に即して言うならば、これは雲平線とでも呼ぶしかない光景だなと思った。

飛行機に乗るのが当たり前だった頃には、こうした光景に向かい合っても何がしかの感想を抱くこともなかったような気がする。