反復運動

この春からブルックナーばかり聴いている。聴いていのは、それもほとんど彼の交響曲第4番ばかりで、その同じ曲の異なる録音を8つぐらいウォークマンに入れて、会社の行き帰りにそればかり聴いている。ときどき他の作曲家や、彼の他の作品を聴くことはあるが、控えめに言っても二度に一度はこの曲。そういう日常を半年ばかり過ごしてきた。

何かがわかったか。いろいろと勉強したとも言えるし、何もわかっていないとも言える。強いて言えば、いまのわたくしの感覚のあやふやさということか。記憶の問題とも絡むわけだが、この前Aと感じたはずの録音にAを感じなかったり、それどころかBを感じたり。この感じ方のずれはとても微妙で、表面的に起こっている現象が過去に体験したものと同一であることは特定できるのだが、そこからもたらされる感情の起伏が異なるという次元の違いがあれば、あれっ、こんなんだったっけと単純に思うこともある。どちらかといえば、そちらの方が多いかも知れない。

これはお脳が弱っているのだろうか。ぼけの始まりだろうか。それとも、そもそも人間の感覚とはその程度の精緻さしかないということなのだろうか。私は案外後者じゃないかと疑っているのだが、よくわからない。