お散歩

観覧車

ネットサーフィンをしていたら、『第三の男』のリマスター4K版がカンヌ映画祭で上映され、この夏にアメリカで商業上映が行われるというニュースにぶつかった。次の瞬間、思いは再度3月のウィーン旅行に向かうことになった。http://variety.com/2015/film/n…

ブルックナーの風景(14): ブルックナーなんて誰も(とは言わないが)興味ない

というわけで、この3月に行ったブルックナーをめぐる旅のエントリーはこれでおしまいです。起承転結のなく、これといったメッセージのない、ただブルックナーという作曲家の存在に寄り添っただけのエントリーで、ブルックナーに興味がない方にはまるで面白み…

ブルックナーの風景(13): 『交響曲のハイキングコース』を通ってブルックナーの生家へ

ザンクト・フローリアンの町では、観光客向けに聖フローリアン修道院を中心として四方にいくつかのハイキングコースが設定されています。午前中の修道院ツアーの後、昼ご飯を食べてから、これらのハイキングコースのうちでもっとも長い『アントン・ブルック…

ブルックナーの風景(12): ブルックナー・オルガン、墓碑、棺

聖フローリアン修道院のゲストハウスにチェックインをし、旅装をほどくと、すぐその足で聖堂に向かいました。聖堂とは、英語のbasilica をここではそう呼んでいるのですが、ほんとうは何と書けばもっとも不都合がないか、しっくりくるのか、キリスト教の知識…

ブルックナーの風景(11): 聖フローリアン修道院の「大理石の間」

聖フローリアン修道院は、春から秋のシーズンには観光客向けにガイドツアーやオルガン・コンサートを開催しているのですが、私が出かけたのは3月でしたから、これといった催し物はなく、そうすると入れる場所、見学ができる施設は限られてしまいます。それは…

ブルックナーの風景(10): 聖フローリアン修道院に泊まる

ザンクト・フローリアンはリンツの街から南南西に18キロ、乗り合いバスで30分ほど下った森と畑が広がるエリアに存在する町です。このザンクト・フローリアン(聖フローリアン)というドイツ語の地名ですが、日本語では聖フロリアヌスという3世紀に実在した人…

謎のAEIOU

前回のエントリーに「AEIOU」について一言だけ触れ、ついでに写真を掲載したところ、西洋史に詳しい近藤さんが目ざとく見つけてコメントを頂きましたので、「AEIOU」とフリードリヒ門について、もう少し付け加えておくことにしました。 15世紀半ば…

ブルックナーの風景(9): リンツから聖フローリアンへ

ブルックナーはリンツで12年を過ごし、二つの教会のオルガニストとして確固たる地位を築きました。さらにジーモン・ゼヒターとオットー・キッツラーから理論を学んで、ヘ短調の習作交響曲と交響曲第1番を作曲し、本格的に交響曲作家への道を歩み始めた重要な…

ブルックナーの風景(8): リンツ大聖堂とリンツ市教区教会

ブルックナーが32歳の時にリンツに来て12年間オルガニストとして仕えた大聖堂と市の教区教会を訪ねました。巨大なゴシック様式の教会は外から見ても、中に入って天井を仰ぎ見ても、建物が宇宙に向かって突き抜けようとする感覚を覚えさせられます。リンツの…

リンツ

ウィーンを後にリンツに出かけました。およそ200キロ弱。ウィーン西駅から特急列車に乗って1時間半ほどの旅です。 リンツは、ウィーン、グラーツに次いでオーストリア第3の規模を誇る都市ですが、ウィキペディアで調べてみると、人口はたったの19万人で、ウ…

ブルックナーの風景(7): ヴァイヒブルク小路3番地

これもインターネットの世の中になったおかげで、旅行が変わったという類の話です。今回のウィーン旅行ではブルックナーをテーマにして色々と歩いてみたわけですが、そのためにあれこれとネットを検索して情報を仕入れました。その中で、ひとつよく分からな…

ブルックナーの風景(6): カールス教会

カールス教会は、聖シュテファン大聖堂やヴォティーフ教会などと並んで、ウィーンに来ると誰もが自然と目にする印象的な教会です。18世紀初頭に時の皇帝カール6世がペスト撲滅を祈念して建てられたという建物は、巨大な丸屋根とその両脇に屹立する円柱が独自…

ブルックナーの風景(5): ピアリスト教会

歴史に残る音楽家としては異例の遅咲きだったブルックナーは、リンツ大聖堂のオルガニストに就任したのが32歳の年だったのですが、その実上昇志向のあった彼は虎視眈々とより大きな都市でしかるべき地位に就きたいと願っていたようです。ウィーン音楽院(現…

ブルックナーの風景(4): アルサー教会

以前、ブルックナーの弟子であるカール・フルビーが彼の師との最後の邂逅の場面を書き記した文章を紹介したことがあります。オルガンの演奏を終えて教会を出てきたブルックナーと偶然に顔を合わせたフルビーが、師の帰り道に同行する際に「交響曲第9番の第4…

ブルックナーの風景(3): ベルヴェデーレ宮殿

ウィーン旧市街のすぐ外に広がるベルヴェデーレ宮殿は、かのプリンツ・オイゲンが18世紀初頭に作らせた夏の離宮で、今回訪れた場所の中では美術史博物館とともに最も観光地らしい観光地でした。どんよりと雲が垂れ込めた朝の9時少し前に宮殿入口に着くと、開…

ブルックナーの風景(2): ヘス小路7番地

ヴェーリンガー通り41番地からちょうど1キロ、都心の方向に向かって歩くと、ウィーンの旧市街の北西の端にあるショッテントールに着きます。今までウィーンには2度来ましたが、最初に学生の時に来た時には国立歌劇場とその近辺しか歩いていないし、2度目は仕…

ブルックナーの風景(1): ヴェーリンガー通り41番地

今回の旅ではブルックナーの痕跡を尋ねるのをテーマにしました。このブルックナーというのは、私が好んで聴く作曲家というだけのことで、他の皆様にとっては「だから何なのよ」の世界です。たぶん、このエントリーには、「ブルックナー、ウィーン」などと検…

ハイリゲンシュタットの遺書の家

今回の旅には、観光旅行なりにテーマをつくって行ったのですが、ベートーヴェンは、言わばおまけでした。おまけでしたが、ウィーンに出かけるのが3度目なのに、これまでベートーヴェン縁の地を訪ねていないのは、音楽好きとしてはもったいないというか、宿題…

観光旅行客の頼りなさについて

純粋な正真正銘の観光旅行をするのは、学生時代以来初めてのことでした。純粋な、というのは、本当に観光を目的に、それもたった一人でどこかに行くという旅のことを、ここでは便宜的にそう呼んでいます。その土地に誰かが待っていると、純粋さには但し書き…

忘れがたきもの

学生の頃の旅は、帰っても情念が彼の地に残っていて、すぐにでもまた行きたいと願うようだったのですが、歳を取ってくるとそういう性急さはどこかにいってしまうらしく、それどころか、風景の美しさや物珍しさといった目に訴える対象への心残りみたいなもの…

SNSとインターネットのウィーン

こんな話はいつも海外旅行や海外出張にお出かけの方にとっては、あまりに当たり前の話で、今頃何言ってんのってなもんでしょうけど、とにかくも私にとっては初めての体験で、本気でびっくりしてしまったので、日本に帰ってそのびっくり感が消えないうちに自…

ザンクト・フローリアン修道院に来ています

昨日から2泊の予定でリンツの郊外にあるザンクト・フローリアンの修道院に来ています。リンツはウィーンから180キロ西に位置した都市で、特急列車でウィーンから1時間半、オーストリアの中では大きな町ですが、ウィーンから来るとこじんまりとして、人ものん…

一つの枠を出て別の枠を体験する

ウィーンの空港から重いスーツケースをよっこらしょっと電車に担ぎ上げて重たい曇り空の下を都心に向けて電車が走り出すと、駅に止まるたびに乗客が増えてくるのだが、日本とは違って人語が少しも増えていかない。皆半で押したような寡黙を守り続けている。…

ウィーンに来てみると

20数年ぶりにウィーンに来ました。前回は、一応曲がりなりにも仕事ですと言える状況で、東京から連れて行った人を案内するような役回りだったので、来たと言ってもそれなりに慌ただしく、街を見たのか見ないのか、よく覚えてもいない程度の滞在でした。でも…

ウィーンに行ってきます

一週間少々の短い間ですが、明後日からウィーンとリンツに遊びに行ってきます。日本の外に出るのはいつ以来だろうと振り返ってみると3年半前にインドに初めて行って以来。ヨーロッパに足を踏み入れるのは2000年の秋のスウェーデン、フィンランド出張以来。純…

だまし絵みたいな話

たった数日の滞在でインドは広い国だなと感じ入ったのは、言葉だな。言葉です。現地で教わったところでは22の言語が国の言葉として規定されているということらしく、大まかに言っても州によって言葉が違うらしい。らしいとしか言いようがないのは、そう聞い…

旅の空

ブログの仲間の木下さんがネットを活用して仕事をしながら奥さんと一緒に世界旅行をしている様子が、ほぼリアルタイムで報告されています。若い頃じゃなきゃとてもできない長丁場、ロング・ジャーニーです。フィリピンに始まってタイ、スリランカ、ドバイを…

インドでわしも考えた

昨年の10月にインドに行きました。生まれて初めてのインド。生まれて初めての日本以外のアジアでした。百聞は一見に如かずと言いますか、聞きしに勝ると申し上げますか、経済が元気な国の人々の活気にはいわく言いがたい迫力を感じました。初めて見る国土の…

雲平線

昨日は自分には珍しい九州出張。日帰りで熊本に行ってきた。羽田空港を飛び立ち、空の上から自分の住まいを目視したり、濃い箱根の緑のなか茶色い引っかき傷のように生々しい大涌谷を見下ろしたり、山襞が複雑に入り組む南アルプスを眼下にするあたりまでは…

徒企画

昨晩は2ヶ月ぶりに『徒企画』に足を運んだ。いつものように快活な若者たちがビールやワインをはさんでカウンターの向こうの店長と対峙し、話の花があちこちに咲き誇る。山崎さんのレシピにしたがって作られたホットワインの、異国情緒が香る温かさと、やはり…